こんにちは。稼働率計算の基礎編では、単純なシングル機器における稼働率の計算方法をご説明しました。応用編では、複数機器の場合の稼働率の計算方法をご説明します。
基本情報処理試験などでも出題されますのでシステムエンジニアを目指す方は必読です。
・機器が並列設置されているときの稼働率を計算する
・機器が直列設置されているときの稼働率を計算する
・機器が並列と直列両方されているときの稼働率を計算する
前提事項
複数機器における稼働率の計算する場合は、まず単体機器の稼働率を計算する必要があります。 単体機器の稼働率の計算は、基礎編をご参照ください。
【基礎編】
直列接続ケース
下図の通り機器が直列接続されているケースの稼働率の計算方法を説明します。どこのシステムでもNW機器やサーバが授受繋がりになっているものかと思います。
この場合の計算方法は非常にシンプルです。
Aの稼働率 × Bの稼働率 = 全体の稼働率
直列なのでAとBどちらの機器が壊れてもシステムが使用不可になるため、A稼働率とB稼働率をかけて算出します。
例えばAの稼働率が0.9で、Bの稼働率が0.8の場合は以下の通りとなります。
0.9 × 0.8 = 0.72 = 稼働率 72%
この式でわかることは、直列に接続される機器が多いほど稼働率(結果的に可用性・信頼性)は落ちるということです。
並行設置ケース
機器を並行設置するケースです。下図のイメージです。
こちらは少し計算式が複雑そうに見えますが、単純な足し算と掛け算です。
1 - ( 1 - Aの稼働率 ) × ( 1 - Bの稼働率 ) = 全体の稼働率
こちらの場合は、機器が同時に壊れなければシステムとしては稼働可能なため、上記の通りの計算となります。
先ほど同様に稼働率がAが0.9で、Bが0.8の場合は以下の通りとなります。
1 - ( 1 - 0.9 ) × ( 1 - 0.8 ) = 0.98 = 稼働率 98%
この計算式でわかるのは平行設置の機器が多いほど稼働率があがることです。ただし、台数の増加に伴う稼働率の増加は逓減(ていげん)してゆきます。
先ほど例に稼働率0.8の機器Cを追加します。
その場合、以下の計算結果となります。
1 - ( 1 - 0.9 ) × ( 1 - 0.8 ) × ( 1 - 0.8 ) = 0.996 = 稼働率 99.6%
機械を一台追加したのに1.6%しか稼働率があがりません。個々の機器の稼働率が高いほどこの逓減(ていげん)の結果は顕著となりますので留意してください。
そのため、並行設置台数は増加させてもだんだん効果は薄れてゆきます。まさに費用対効果の考え処です。
複合パターン
実際のシステムでは、並行設置と直列設置の複合ケースが多いと思います。これもサンプルでご説明します。難しいと感じるかもしれませんが、個々の式を理解できていれば計算は簡単です。
パターン1
下図のような並行設置中に接続が一旦集約が構成されるパターンです。
この場合は、先の並行設置グループ(ABペアとCDペア)の稼働率を計算し、その後にABペア稼働率×CDペアの稼働率を計算します。
全ての機器の稼働率が0.9とした場合は以下となります。
( 1 - ( 1 - 0.9 ) × ( 1 - 0.9) ) × ( 1 - ( 1 - 0.9 ) × ( 1 - 0.9) ) 0.98 =稼働率98%
パターン2
今度は平行設置が二つ連なっているケースです。
この場合は先に直列部分を計算します。A×CとB×Dです。この後に平行設置の稼働率計算をします。すべての機器の稼働率が0.9を前提にした計算式は以下です。
1 - ( 1 - ( 0.9 × 0.9 ) ) × ( 1 - ( 0.9 × 0.9 ) = 0.96 = 稼働率96%
あくまでも組み合わせなのであせらず計算すれば簡単です。実務においては稼働率が明確にわからないケースがあると思います。
この場合においても仮の稼働率を代入してこの場合だと稼働率が上がる下がるなどを計算するだけでも構成の妥当性がわかりやすくなるのでお勧めです。